親が亡くなって実家が空き家になった。
子どもは居るけど、それぞれが独立して実家で暮らすことは無い。
それなら、子ども達で『共有名義』として相続することに…なんてケース、よく耳にするのではないでしょうか。
現在は核家族化が進み、子ども達が自立して親が亡くなった後の実家をどうするかという問題があります。
すぐに結論を出すことができず、子ども達共有の財産として保有することを「不動産相続の共有名義」と言います。
一見離れた家族間を繋ぐ温かい解決方法のように思えますが、この『共有名義』におけるメリット・デメリットもしっかりと把握しておく必要があります。
不動産相続における共有名義のメリット・デメリット
不動産の共有名義とは、同じ不動産を複数人で保有することを指します。
それでは、不動産の共有名義となる上でメリット・デメリットはどのような内容があるのでしょうか。
<メリット>
・相続に関する意見がまとまらず膠着状態になった時の打開策
・節税対策
「売却の話がうまく進まない」「分配方法で揉めてしまった」など、なんらかの理由で相続に関する話し合いがスムーズに進まなかった場合、ひとまず共有名義とすることで結論を先延ばしにすることができます。
いずれかは何らかの対処方法を考えなくてはいけませんが、その時の状況によって改めて話し合いをすることができるので、結論を急かすことなく考察しながら進めることができます。
その場の意見をまとめやすいという点は最大のメリットと言えるでしょう。
また、共有名義とした不動産を売却した場合、それぞれの共有者が特例を使用して節税することができるのもメリットの1つです。
<デメリット>
・売却などの際には共有名義である全員の同意が必要
・再登記手続き
・固定資産税の支払いや持ち分の細分化などのトラブルが発生しやすい
共有名義となった不動産をどうするか、決定権は共有名義となる全員が同じ割合で所有していることになるため、全員の同意が必要です。
そのため、手続きに必要以上の手間と時間が掛かってしまう点は、共有名義の最大のデメリットであると言えます。
さらに、相続によって持ち分が細分化され、割合を決める際に時間がかかることから、そのことを面倒に感じ決めないことがあるので、その区分についてトラブルになる可能性があります。
例えば収益物件だった場合、収益の分配をどうするか、また固定資産税の負担はどうするかなど、共有名義となる際に明確にしておければ良いのですが、それはなかなか難しいと現状が見受けられます。
「再登記手続き」については、新たに単独名義となった場合には登記を変更しなければいけません。
そのための手続きを再度行う必要が出てくる手間があります。
不動産相続、共有名義に関するトラブルとは?
ここでは、共有名義によって起こった実際のトラブル事例をご紹介します。
「父親が他界して20年以上が経ち、現在実家には母と長女である私が住んでいます。
姉弟は弟が1人います。
自宅の名義は父が亡くなった時点で、母・弟・私3人の共有名義になり、現在もそのままです。
弟は実家を出て10年以上が経っています。
弟は遠方ということもあり、実家を出た後はめったに立ち寄ることも無く、母親の面倒も私がずっと見てきました。
そんな母も最近は入退院を繰り返すようになり、私も徐々に覚悟しなければ…と思っています。
ある日弟から、母に万が一のことがあったら共有名義の不動産を売却してお金にした後、自分の分を請求したい…と言ってきたのです。
私自身は母亡き後も実家に住み続けるつもりでしたので、売却に強く反対しましたが『共有物分割請求』という訴訟を起こすと言ってきました。」
このトラブルは結果として、弟の共有持分を明確にし、その持ち分のみを売却することで対応することとなりました。
長年共有状態を放置しておくと、トラブルの引き金ともなりがちです。
専門家を交えて早めの対策をおすすめします。
まとめ
不動産となると大きな金額となり、それに関わる人数が多くなればなるほど、トラブル発生の種になりかねません。
共有名義もメリットがある対処方法ではありますが、そのまま長年放置するのではなく、一時的対処として認識し、状況を見て話を改めて対策を施すように心得ておくことをおすすめします。